岡島二人 「99%の誘拐」

 ■ 最先端電子技術によるハイテク犯罪SF ■

如何に人質を生かさず・殺さず扱い、如何にリスクを回避して身代金を受け取るか・・・

『誘拐』と聞くと、人質の扱いなど非常に泥臭いものを思い浮かべがちだが、
岡嶋二人著 『99%の誘拐』 は違う。サイバーな匂い漂う、SFものだ。

おれの独断と偏見によると、楽しみを享受できる読者はこのような感じだ。




ふむ・・・ 読みやすく、それでいてスリリング・・・か。
そして、SF的な要素も忘れていない。

一体どんなストーリーなんだ、村田?


簡単に説明すれば、こうだ。

すべての発端は、末期ガンに冒された男の手記だった・・・
そこには8年前、息子が誘拐された事件についての一部始終、

― 犯人にいいように振り回され、金塊に替えた5000万円が奪われるまでの過程 ―

が、語られていた。 犯人が捕まらず、迷宮入りを迎えた事件だった・・・

しかし、そんな事件の記憶も風化したその12年後・・・。
その誘拐事件を模倣した新たな誘拐事件が起こる・・・!

しかもそれは、誘拐手段、脅迫電話の応答、要求額10億円の受け渡しまで、 すべてがエレクトロニクスによって制御された、前代未聞の犯行であった!!


12年前の事件との関連はいかに!? そして、犯人の計画の全貌とは!?

犯人と警察、この精巧なる電子戦に勝利するのはどっちだッ!?  

何て・・・ 何て心惹かれる物語なんでしょう!!
SFというのは、タイムマシンやら宇宙ステーションが出てきてどうこうの、 だとばかり思っていました。

特に、電子制御の誘拐なんて、実際にありそうな感じがいいじゃないですか。


うむ、おれも全く同意見だ。 この物語の魅力の一つとして、
極めて現実感のある、"手の届くSF"である という点があると思う。

加えて、ルパン三世に登場しそうな電子機器の万能さだけは突っ込まれるかも知れないが、 特に、各人の言動が非常に合理的である事も特筆すべきだろう。
いや、我々の感覚から離れた人間が登場しないと言い換えてもいい。
そのため、まるで実際に当事者になったような臨場感がある。

つまり『自分も同じ立場ならそうする!』といった思いから、知らず 感情移入してしまうのだ。
この物語への引きこみ方は、見事としか言いようがない。


何となく村田の言いたいことは判るぞ。

例えばあれだ・・・推理小説でよくある、『何故か勝手な行動を取る奴』だろう。
皆で固まってた方が絶対に良いのに、何故かはぐれる。
こんな感じの、著者の都合で書かれたと思しき"作為的箇所"がないってことだろう。


まさにその通りだ。 そして勿論、そのリアリティが引き立てる物語最大の魅力は、
スリリングな展開の中に、精巧に仕組まれたプロットだ。
・・・犯人の誘拐計画自体が魅力的であると言ってもいいがな。

誘拐事件と言えば、 『人質と一緒に隠れ家に潜伏している犯人が、電話であれこれ要求してくる』・・・
そんな"静的な"構図を誰しも思い浮かべるだろう。
逆探知されるリスクもあり、誘拐がうまくいかない所以(ゆえん)だな。

ところがここに 『電子技術』を導入する事で、「犯人がどこにいても良い」という"動的な"状況を 作り出したのが、この作者達の上手さだ。
これは・・・ 『誘拐犯罪のIT革命』と言っても過言ではあるまいッ!!


自動改札が切符をパチパチ切る駅員さんの煩わしい仕事を無くしたように、 『電子技術』が「一定の場所に留まらねばならない」という 誘拐犯の制限を無くした・・・。

その状況を、極めて現実的にシミュレートした作品ということだな。
なるほど、これは大変に面白そうだ。


竹居がうまくまとめたところで、今回は終わりだ。
これで「チーム・ゴルボンズ」は、

人類の叡智を、また一つ獲得したッ!!

うむッ!!

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