井上夢人 「風が吹いたら桶屋がもうかる」

 ■ クスリと笑える超能力&謎解きショート・ショート。 ■

ちょっとした推理小説を、4コマ漫画でも読むかのように味わう――。

井上夢人著 『風が吹いたら桶屋がもうかる』は、それを叶える作品だ。
それぞれに用意されているオチが見事な、オモシロ推理短編集と呼べるだろう。

おれの独断と偏見によると、楽しみを享受できる読者の傾向はこのような感じだ。




ほう、読みやすさを売りにしつつも、謎解き要素も少し含まれるということか。
時間がない推理小説好きにも向いていそうな感じだな。

それで、どんなストーリーなのだ?


簡単に説明すれば、こうだ。

牛丼屋でバイトする三宅峻平(シュンペイ)、超能力者の松下陽之介(ヨーノスケ)、 理論派の両角一角(イッカク)の三人は、互いに気の合う同居人である。
シュンペイのバイト先に、噂を聞きつけて毎回依頼人が訪れる。

これら依頼人の目当ては、ヨーノスケの超能力である。
彼らは自身の抱える謎を、超能力で解決して貰おうとするのだ。
ヨーノスケが超能力に必要な精神集中を行う中、依頼人の置かれた 状況を論理的に分析していくシュンペイとイッカク。


謎を解き明かすのは、安楽椅子探偵イッカクによる論理的考察か、
それとも超能力者ヨーノスケの超能力か?!


しかし一応の解決を見る彼らを、毎回意外な真相が待つ・・・!  

例えば、写真から行方不明になった人の居所を霊視するとか、 そういった能力を持つ人間と、状況を分析して推理して 理詰めで詰めていく人間との対決ってことだな。
なかなか面白そうではないか。


うむ。 ハッキリ言ってしまうと、話自体は毎回ワンパターンだ。
それにも関わらず飽きさせないところに、作者のセンスを感じるな。
それぞれの話が、コンパクトかつコミカルによくまとまっている

ただ、そうはいっても作品ごとに当たり外れはある
こりゃ面白いと思えるものと、なんじゃこりゃと思うものとの玉石混合だ。
ま、毛並みの異なる題材を、超能力による展開と推理による展開とで 2パターン考えなくてはならない手間を考えれば致し方なしか。

欲を言えば、最後はタイトルに沿って、本当に桶屋が儲かってしまう ような奇抜な展開であれば良かった。


まあ、短編集だと当たり外れがあるのは仕方ないことだな。
しかも、狙って同じ展開にしているのなら尚更だ。
同じ展開というレールの縛りに、超能力と推理という二つの縛り・・・
そこに更に、『風が吹けば桶屋がもうかる』の縛りを加えてしまうのは 求めすぎかも知れないぞ。


確かにな。 ただ、敢えてもう一つ惜しかった点も挙げておく。
ヨーノスケとイッカク、これら2人の強い個性を持ったキャラの立て方はとてもいい。
だがその一方で、一般人の代表ぶった、主人公のシュンペイの中途半端さが浮いていると思う。
「超能力なんて信じないと、心の中だけで思ってればいいのに」という趣旨の話を しておいて、「イッカクのような頭の使い方はごめんだ」と言うのは反則だろう。
それも心の中だけで思ってればいいのに、ってことにはならんのかと言いたい。

超能力とは人の役に立つ能力の内、他の人より際だった能力のことだろう。
それなら、イッカクの妙な論理力も超能力のカテゴリに入っていたっていい。
むしろ、シュンペイも何か超能力を持たせて、超能力者3人組の話にしてしまっても 良かったんじゃないかと思った。


例えば、牛丼屋の店員ということで、数々のオーダーを同時にこなせる 異常な記憶力がある、とか良いかも知れませんね。
あとは、お勘定の時に暗算が速くできる・・・とかかな?

そうなると、以来の種類もヨーノスケ一人への依頼では なくなるので、物語の幅が拡がりそうですね。


うむ、但しオチの付け方がなかなか難しくなりそうだがな。
これで「チーム・ゴルボンズ」は、

人類の叡智を、また一つ獲得したッ!!

うむッ!!

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