戸梶圭太 「闇の楽園」

 ■ カルトVSオカルト。こうも人は流されやすいものなのか・・・? ■

疑うことを忘れ周囲に流される時、人はカルト宗教の信者と大差ない。

そんな現代社会の危うさを匂わせる物語が、これだ・・・
戸梶圭太著 『闇の楽園』

おれの独断と偏見によると、楽しみを享受できる読者の傾向はこのような感じだ。




ドラクエなどのRPGで出てきそうな名前だが、ファンタジーではないのだな。
テーマが結構重そうなので重厚な作品なのかと思いきや、まったく平均的だな・・・

それで、どんなストーリーなのだ?


簡単に説明すれば、こうだ。

上司との反りが合わず失職した営業マン、青柳敏郎。
彼はひょんなことから、長野県坂巻町が町おこしのアイデアを募集していることを知る。
賞金100万円の魅力にも惹かれ、彼が考えたのは破天荒な考えだった。

『お化け屋敷だらけのテーマパーク』・・・!

誰も考えなかったそのアイデアは会議で採用され、順風満帆に軌道に乗るかに見えた。
しかし少なからぬ民衆の反発に遭い、その是非を問う住民投票にまで発展する・・・!
そしてその陰には、新たなる拠点を築こうと暗躍する、新興カルト宗教の影が・・・?!


新興カルト宗教は、綿密な計画に基づき着々と民衆を取り込んでいく・・・
勝利するのは町長ら賛成派、カルト潜む反対派のどちらか?!


それぞれの「明日」が、激しく火花を散らす戦いが始まるッ!  

ああ、近くにテーマパークができるのって、賛否両論ありそうですものね。
そんな皆の迷いに付け入って、規模を拡大しようと目論むカルト宗教・・・
いかにも有りそうな展開じゃないですか。

なるほど、ちょっと面白い設定ですね。


うむ。 この物語の原題は『ぶつかる夢ふたつ』だったことからも判る通り、
『町長ら賛成派』VS『カルト教団』という構図で、両者の視点から描かれる。
正直、『闇の楽園』というタイトルもイマイチで『オカルトVSカルト』とか 奇抜なところを狙っても良いような気がするが・・・。

そして対立する両方の立場・主張を見せることで、
この物語は、「どちらが本当にカルトか?」という疑問を我々に抱かせる。
いかにも新興カルト宗教は胡散臭いという時流になっているが、 その考え自体がカルト的なのではないか、という疑問だな。

気を付けていないと、人はいかに流されるかが描かれていてそう思えるわけだが、
裏を返せば「人間臭さ」が表現できているということでもあるだろうな。
その意味で、人間ドラマとして本作は成功していると言える。


確かにな・・・
恐らく『新興宗教は胡散臭い』というのも、オウム事件が あれだけ大々的に報道されたからだろうな。
おれたちは 周囲が同じ考えだと、それが完全に正しいと決め付けてかかる癖がある。

誰でも振興カルトに引っ掛かる可能性がある、ということだな。


そういうことだな。 ただ、それを思わせるにしても話に取りとめがなさすぎる
だが青柳と町長が出会うまでがいかにも長すぎるし、 途中にあっと驚くイベントがある訳でもない。

関係のないエピソードが挿入され過ぎていて、主張がボケてしまっている感じ なのだ。
登場人物像を重厚にしようとしたんだろうけど、「それはいいから早く進めてよ」と 焦れったい事この上ない。

そのため、肝心の部分はよく判らないままだったりするのだな。
結局、最後まで学院が何でそんなに牽引力を持っているのか伝わってこないし、 学院長の意図もよく判らないままだ。
賛成派も学院(新興宗教)にスパイを送り込んで、お互いにハラを探り合う・・・
といった展開にすればもっと良かったのに、と思った。


ははぁ、色々書きすぎて結局理解を妨げている、大学の教科書みたいなものですね。
よくよく読んでみると一つに繋がっているんだけど、 各論が多すぎて頭が混乱する・・・。

いかに文章を削るかという点にも気を配って欲しい・・・
そんな感じでしょうか?


うむ、書き方に内容も含め、大学の教科書というのはいい譬(たと)えだ。
これで「チーム・ゴルボンズ」は、

人類の叡智を、また一つ獲得したッ!!

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うむッ!!